ペイ・フォワード

 私はプレイヤー全員に大きな影響を与えるカードの大ファンだ。全てに効果をもたらすカードは往々にしてマナコストが軽く、威力が大きい。<生ける屍><吠えたける鉱山><血染めの月>!これらはゲームの性質をまるっきり変えてしまう!

 私は<死の雲>のような全員のリソースを食い潰すカードも好きだが、それよりも<繁栄>や<春の鼓動>といった全員にアドバンテージを与えるカードを上手く使えた時こそが、ゲーマーとして最も楽しい瞬間だと感じる。そこで今日は、統率者戦において全員にメリットがあるカードを使う事について語ろうと思う。


 統率者戦のような多人数戦において、大量除去は引っ張りだこである。自分は1枚のカードを使うだけで、複数の対戦相手の脅威を取り除くことができるからだ。逆に、<剣を鋤に>のような単体除去は、使ったプレイヤーと使われたプレイヤーがカード1枚分損をするだけなので多用するわけにはいかない。もちろん<炎災のドラゴン>がこっちに向かって来た時の為に、数枚のインスタントの除去をデッキに入れるのは良い選択だろう。

 では、他の人にまで利益を与えるカードを使う事にはどのようなメリットがあるだろうか?

自分が最も多くの利益を得る

 1つ目のメリットは、自分だけがそれらのカードの存在を想定してデッキを組めるという事だ。

 例えば<春の鼓動>をデッキに入れる場合、自分は豊富なマナを最大限活用できるデッキにすればいい。3ターン目までに<春の鼓動>を引き込めれば4ターン目には8マナの呪文を唱えられるので、5~7マナのカードを減らして8マナ以上のカードを普通よりも多くデッキに入れる事が可能である。またはドロー呪文を多めに入れて1ターンに唱えられる呪文を増やすのも良いだろう。<起源の波>に注ぎ込むマナの捻出に困る事もない。

 この方法でデッキを組む場合、デッキの冗長性には気を付けておこう。早いターンに<春の鼓動>を引けなかったらマナが足りなくなるようではデッキとして成立しないので、似たようなマナを増やす手段をいくつか入れておく必要がある。私が<春の鼓動>をデッキに入れる時は、必ず<ほとばしる魔力><Eureka><睡蓮のコブラ>といったマナ・カーブを無視できるカードを一緒に採用している。

 一方対戦相手からしてみれば、自分の土地から出るマナを倍にされたところでマナの使い道に困ることになる。赤単や白単は手札のカードを使いきったらそこでハイ終わり。緑や黒のデッキであっても、毎ターンマナを使い切ることは困難だろう。もちろん、<憤怒の天使、アクローマ>のように大量のマナ消費するカードが脅威になる事もあるのだが…。

 全員にアドバンテージを与えるカードを使う場合、自分だけがカードを1枚とマナを消費していて、対戦相手は丸儲けのように感じるかもしれないが、長い目で見て自分が対戦相手よりカード1枚とそれを唱えるために支払ったマナ以上の利益を得ていれば問題ないのである。

目立たない

 2つ目のメリットは、お互いのアドバンテージになるカードは悪目立ちしないという事だ。

 統率者戦では一般的に対戦相手から「あいつが1番ヤバイ。」と思われるような立ち回りを避けるべきだと言われている。というのも自分がいくら強力な軍勢を従えていようとも、他のプレイヤー全員から攻撃されればひとたまりもないからである。

 先ほど例として挙げた<春の鼓動>と似たようなカードで、自分だけ生産するマナを倍にする<マナの反射>というカードがあるが、こちらは対戦相手から危険だと思われるカードの筆頭である。<マナの反射>をプレイすれば、次のターンには10マナ以上のカードをプレイできる。エルドラージでも、<全知>でも、X=10以上の<起源の波>でも。つまり対戦相手は協力して戦うか、さもなくば死すかを選ばされるのである。

 <春の鼓動>の場合、プレイしてもただちに対戦相手全員から狙われる事はないだろう。皆が核兵器のスイッチを握っているのであれば、誰か一人だけが悪役だとは思われないはずだ    実際にスイッチが押されるまでは。

ゲームの雰囲気を変える

 3つ目のメリットは、お互いに大きな影響を与えるカードはそれをプレイするだけで楽しいという事だ。これはゲームの勝敗には全く関係ない特徴だが、私のようなカジュアルプレイヤーにとっては最も重要なポイントだ。
 
 統率者戦のデッキは統率者を中心に据えて構築されるので、100枚のハイランダーとはいえ何度も同じデッキでプレイしていればある程度似通った動きになるものである。

 例えば<幽霊議員、カルロフ>が中心のデッキはほぼ全てのゲームにおいて、2ターン目にカルロフを出してからライフ回復用のカードを並べるし、<群衆の親分、クレンコ>は3ターン目までに数体のゴブリンを召還しておく。といった具合に、大抵のデッキには中心となるプランと大まかなマナ・カーブが存在する。

 したがって同じメンバーがデッキを変えることなく対戦していると、ゲームの雰囲気が変わらないので大抵何試合かすれば飽きてしまうのである。そういう時はデッキを変えるか、プレインチェイスの次元デッキを使ってもよいのだが…デッキの中にプレイヤー全員を大きく加速させるカードを数枚入れておいても簡単にゲームの雰囲気を変える事ができる。4ターン目にクレンコが手札のゴブリンを全部展開できる状況は、勝てる勝てないを抜きにしても面白いだろう。

 全体に影響があるカードはいわばデッキに入っている次元カードのようなものだ。それらのカードの影響下にある間はいつもとは全く違ったゲーム展開になるので、デッキの動きに飽きてしまうのを防いでくれるのである。

吾輩はカモ・・・ではない

 全員にメリットがあるカードを使うのはリスクが大きいと感じるかもしれないが、それ以上に大きな見返りを期待できる。特にカジュアルな統率者デッキを組む時は、こういったゲームの展開を変えてしまうカードを使う事を強くおすすめしたい。

画像引用元:http://magiccards.info/chk/en/212.html

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